お知らせ

呉服業界の最新情報をお届けいたします。

浴衣の時期とマナー:朝・昼から着ても問題ありません

暑い時期になると、「浴衣を昼から着るのはマナー違反だ」、「浴衣は寝巻だから、昼間に着たり、普段着として着るのはおかしい」という方がたまにおられ、毎年問題になっています。最近では、「着物警察」という言葉も時々聞くようになりました。では、浴衣や単衣を昼間や朝から着る事はおかしいのでしょうか?また浴衣や単衣はいつから、いつまで着てもよいのでしょうか?

浴衣普段着

更紗ゆかた。こちらもゆかたです。

結論から言うと、浴衣は普段着・日常着として着ても全く問題ありません。「浴衣」という表記を気にされるのであれば、綿着物、木綿着物、麻着物、太物(ふともの)と表記すればSNSのトラブルは避けられると考えます。(※絹の着物以外を「太物(ふともの)」と表現します。「絹」の繊維が細く、綿や麻の繊維は絹と比較して太いので、「太物」と表現します。)

<浴衣を着る時期:いつ着ても構いません。4月~10月に着ても問題ないです>

「浴衣はいつ着るの?」、「浴衣は、いつからいつまで着られるの?」という質問も多いです。

一般的に、7~8月に盛夏に着るのが良いとされていますが、あくまで目安です。時期や季節に関しても同様です。4月~10月まで着ても問題ありません。温度に合わせましょう。4月に着ても、5月、6月に着ても構いません。9月、10月に着ても問題ないです。単衣も同様です。3月が暑ければ、3月に着ても問題ありません。これは近年の気候の変化によるものです。

いつ着ても、夏以外の時期に着ても、朝から着ても昼から着ても全く問題ありません。私は、9月でも10月でも暑ければ浴衣を着ています。なぜならば、暑いからです。浴衣は、洋服でいうとTシャツ、ジーパンといったカジュアルな普段着です。昔は「ゆかたがけでどうぞ」という誘い文句がありました。浴衣が普段着であったからです。

要はその時期に過ごしやすいかどうかです。ただ、パーティーや冠婚葬祭など、ドレスコードがあるような場合はご確認ください。(5で記載していますが、地域のお祭りや慣例、夏の成人式による差などもあります。こうした慣例も知っておくと、様々な考え方がある事を知る事ができます)

関連記事:浴衣は普段着、竺仙小川社長

浴衣の時期4月に着ても10月に着ても問題ありません

1、一般的に言われる浴衣を着られる時期

おおよそ、7月~8月がふさわしい、と言われていますが、これはあくまで目安です。「何月何日からオーケー」と言った絶対的なルールがあるわけではございません。これは呉服店などがお客様に「この着物(浴衣)は、いつから着られますか?」といった質問が多く、答えられないといけませんので、あくまで一つの「目安」として作ったものにすぎません。こうして着物業界で形成されていった一つの「目安」が、原理原則のように認識されていっただけです。というのも法律で規制されていますか?規制されていません。

ちなみに江戸時代の庶民の大半は綿や麻の着物を普段着として着ていました。絹は一部の富裕層、武士、公家の方が着ていました。よって自由です。日常着において何を着るかは、「個人の自由」です。筆者は暑ければ、10月でも浴衣を着ます。各地の例大祭によって、その基準も一律ではありません。

ですので、実際はいつ、何を着ても構いません。あくまで、一つの参考レベルとして考えておけばよいでしょう。

2、夏日、真夏日、猛暑日について:4月でも真夏日

さて、2022年3月中旬から暑くなってきました。3月14、15日ころから20~25度の地域が増えています。京都では、2022年3月16日の日中の最高気温は22度と予想されています。また最近では、4月や10月に30度を超える日も珍しくありません。

参考までに「夏日」、「真夏日」、「猛暑日」とは、統計開始1939年から気象庁により、下記のように定められています。
夏日とは最高気温が25℃以上の日
真夏日とは最高気温が30℃以上の日
猛暑日とは最高気温が35℃以上の日

よって、25度を超えれば「夏日」、30度を超えれば「真夏日」です。3月でも4月でも25度を超えれば夏ですね。25℃を夏日、30度を真夏日、35℃を猛暑日と気象庁が定義しています。また2021年10月には、30度を超える日が多くあり、10月に浴衣や単衣を着る方も増えました。体感温度は人それぞれですが、男性に暑がりが多い傾向がございます。

25℃以上で暑く感じる方もおられますし、30℃で熱く感じる方もおられます。
何をもって「暑い」と感じるかは、個々人の判断です。正誤はございません。個性を尊重致します。
しかし、自分の個性を人に押し付ける事はやめたほうがよいでしょう。
というのも、万が一、自分の個性を他者に押し付けて、熱中症などで、その方が倒れ、病院に搬送されたら、発言者は入院費などの責任が取れますか?責任が取れないのであれば、押しつけるような表現は避けた方がよいでしょう。

最近では、着物を比較的良く着る方は単衣を柔軟に着られる方が増えています。

3、浴衣をフォーマルに近づけるには:襦袢や足袋や草履を履けば、夏着物に近づきます。

また、筆者(男)は暑がりですので、「暑い」と感じれば、浴衣を着ますし、単衣を着ます。私は仕事の関係上、ほとんど毎日着物を着ています。
「いつ」、「なにを」着るかは個人の自由です。私は暑ければ、昼から浴衣を着ます。なぜならば、暑いからです。それ以上でもそれ以下でもございません。

熱中症になって倒れてしまっては本末転倒だからです。ですので、暑ければ4月でも、5月でも9月でも浴衣を着ます。
(※ただ、浴衣を着る時も私は、足袋と雪駄を履きます。そうする事で、フォーマルに近くなります。また、襦袢、肌着を着ることで、より夏着物に近くなります。ただ、私はあまり襦袢は着ません。襦袢を着ると暑いからです)。

4、日本は広い:北海道から沖縄まであり、平均気温は違います

日本は北海道から沖縄まで縦に長く分布し、住んでいる地域によって、平均気温は変わってきます。それを一律に月度(4・5・6月など)で一律で規制しようとするのはナンセンスですし、あまり意味がありません。
むしろ沖縄と北海道の衣装、衣服を一律で規制しようとする行為は、滑稽だと感じます。住んでいる地域によって、気温は変わります。北海道の方が袷を着ているときに、沖縄に住む方にも袷を着せようというのでしょうか?気候的に、論理的に無理があります。

また、イギリスやアメリカ、タイやオーストラリアで着物や浴衣を楽しむ方もおられます。海外にも着物を楽しまれるファンはいらっしゃいます。

住む土地によって、気温は変わるのです。特にオーストラリアやニュージランドは南半球で季節は逆転します。

そんな所に住む人に「4月はだめ!5月はダメ!12月はダメ!」というのでしょうか?それもまた滑稽です。※関連記事 キモノでジャック UK

もし仮に、万が一、むりやり袷を暑い時期に着てしまって、熱中症になって病院に運ばれてしまったら、誰が責任を取るのでしょうか?誰も責任をとれません。ですので、体感温度や体調を優先し、着やすい着物を着てください。

5、地域の祭り、慣習などによる解禁日の違い:「三社祭」、「とうかさん」など

また各地域において、お祭りや花火大会があります。時期は一律ではありません。公的なものではありませんが、その地域の人たちはその時期から浴衣を着てお祭りを楽しみます。各地のお祭りの一例を紹介します。

・東京「三社祭」:東京都浅草の浅草神社の例大祭である三社祭は、毎年5月の中旬に実施されます。地元の方は、このお祭りを浴衣で楽しむ方も多いです。

・神田祭(神田明神祭)(東京都千代田区)
東京都千代田区の神田明神で行われる例大祭。毎年5月に行われます。山王祭、三社祭と並んで江戸三大祭の一つ。神田祭、三社祭は、東京では「浴衣の着始めの祭り」としても知られています。

・熱田祭り(尚武祭)(愛知県名古屋市):毎年6月に行われる熱田神宮の最も重要で荘厳な例祭。名古屋に夏を告げる祭りとして、地元の人々は、毎年この祭りから浴衣を着るならわしがある。

・姫路ゆかたまつり(兵庫県姫路市)
姫路城の守護神である長壁神社の例祭にちなむ夏祭。毎年6月に開催。名のごとく、浴衣着始めの祭。

・広島「とうかさん」:広島市の圓隆寺(えんりゅうじ)の大きなお祭りである「とうかさん大祭」は、6月の初旬に行われており、別名「ゆかたの着始め祭り」とも言われています。多くの方が艶やかな浴衣姿でお祭りを楽しみます。こうしたお祭りは、その年の浴衣の指標として着物業界では注目を集めます。

・藤崎八旛宮秋季例大祭(ふじさきはちまんぐう)(熊本県熊本市)
熊本県熊本市中央区に鎮座する藤崎八旛宮の例祭。9月の第3月曜日に実施。熊本市では、この例大祭まで、浴衣・夏物が着られると考えられています。

また、9月に花火大会を実施する地域もあり、そのころに浴衣を楽しむ地域もあります。そして成人式を1月に行わずに夏に実施する地域もあります。これは「成人式」が各地方自治体の判断で行われるものであり、雪の多い地域では、交通難などの問題などもあり、夏に行っていて、慣例になっているからです。そうした地域の方は、浴衣で成人式を祝います。当然ですが、成人式は成人を祝う一生に一度の大切な式典です。

こうした様々な地域性を無視して「7~8月以外の浴衣はだめだ」と一方的に主張する行為は、乱暴な行為であり、地域性や慣例を無視した行為ではないでしょうか?様々な地域の慣例、風習なども知っておくとよいでしょう。日本は広いのです。

浴衣は4月に着ても9月に着ても問題ありません

6、浴衣について:浴衣は日本の文化です
浴衣は日本の文化です。花火、お祭りなど全国で楽しまれています。朝からでも、お昼からでも、着ても問題ございません。
たまに、「一流ホテルに入れない」という方がおられますが、おそらくかなり昔の事を言われています(1990年代にはあり得ました。ただ、今は2022年です。20年以上、場合によっては30年以上、昔の話を持ち出されても困ります。ご存知のように、1990年代には、ポケベルなどがありましたが、スマートフォンはございませんでした。)

今では、大半のホテルが許容していますし、浴衣パーティーも盛んに行われています。もちろん100%全てのホテルが受け入れている、と断言はできません。また催し物や主催者によってドレスコードが決まっている場合も多々ございます。その点は、ご自身でご確認される事をお勧め致します。

ご参考までに。京都ホテルオークラ、ハイアットリージェンシー京都、リッツカールトン、ホテル椿山荘東京、リーガロイヤルホテル、ホテルグランヴィア京都など様々なホテルで浴衣パーティーが開催されています。ご参考になれば幸いです。

7、TPOはあるので、その点はご注意ください。
冠婚葬祭などのフォーマルな服装を求められている場合、またはドレスコードが決まっている際は、適切な服装をされることをお勧めいたします。

主催される地域や内容、場所によって様々なしきたりや儀礼がございます。

一般的に、友人・知人の結婚式や、大切な方のお葬式に半袖・ジーパンで出席される方がおられないことと同じです。

ただ、日常着、普段着に浴衣を着ることは何ら問題ないかと思います。日常着・普段着としてもっと気軽に浴衣を楽しんでもらえれば幸いです。

筆者:松尾俊亮

関連記事

インターネット・SNS誹謗中傷対策:4万人グループ管理者の対策方法

浴衣かぶらない色は?浴衣色別調査

ゆかたの日は七夕の日

浴衣は洗濯機で簡単に洗えます

浴衣、麻着物、小千谷縮の手洗いの仕方

浴衣のえりは左右どっちが上?左が上です!

着物業界データ一覧(着物市場規模など)

きものと宝飾社とは?