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着物市場規模に関する調査2022年

【調査結果要旨:着物業界にもコロナ禍はダメージを与える】
■2021年着物市場規模は、前年度比88%の2,446億円。
2021年の着物市場規模は、前年比88%の2,446億円。着物業界誌「ステータスマーケティング」2022年1月号全国着物小売店売上高ランキング200社(2020年4月~2021年3月決算)、及び弊誌「着物年鑑2021」を基準に推計。小売店も厳しいが、問屋・メーカーへの影響は更に大きい。

着物市場規模2021年
コロナによる海外観光客の激減・お出かけの減少は、旅行客を対象とする街着レンタルに大きな影響を与えた。

日本政府観光局(JNTO)が、2021年に訪日外国人観光客数推定値を24万人と発表した。これは、2020年441万人と比較すると-87.1%、2019年の3,188万人と比較すると99.2%減となった。2019年と比較すれば1%以下である。ホテル業、航空業、観光業から見れば大打撃である。1%以下の観光客数になっている。

2021年訪日外国人数

日本人観光客が一時戻ることもあるが、街着レンタル事業は厳しい状況下にある。このような状況の中、一般呉服は苦戦。特に訪問着などのフォーマル品は苦戦。七五三・振袖は比較的堅調。これは、コロナ禍においても、子供には何かを体験させてあげたい、という親心がある。また七五三や振袖の前撮りなどは、家族単位の小規模なイベントである事も、コロナ禍の現状に合致している。ただし、七五三や振袖は、レンタルやママ振の占める比重が大きい。およそ8割以上をレンタル・ママ振が占めると推定する。このような中、市場規模はある程度維持されているが、商品を作るメーカーや、商品流通を担う問屋への打撃は大きい。着物の生産数量は着物市場規模以上に減少している。

【調査手法】
きものと宝飾社では、着物業界誌 月刊「ステータスマーケティング」(年10回発刊)による取材を通じ、次の調査手法において国内着物市場の調査を実施した。(調査期間:2021年1月~2021年12月)
・調査対象:着物関連メーカー、着物関連卸売業、着物関連小売業、その他イベント、セミナー
・調査方法:専門員の催事取材、インタビュー、SNSを通した市場調査、郵送アンケート及び文献調査

■掲載雑誌
雑誌名:月刊「ステータスマーケティング」2022年1月号
発刊日:2022年1月1日(既刊)
定 価(新年号のみ):10,000円(税・送料込) ※年間購読料36,000円(税込)(年10回発刊)

■「着物レンタル」、「リサイクル着物」コロナによる打撃が大きい
 観光客を中心としたレンタルショップが2019年まで増加していたが、2020年からコロナの直撃を受け、厳しい状況下に。ショップの閉店や店舗整理が進む。コロナ前の2019年の約3,000万人の海外観光客数に戻る見込みはまだ見えない。
2020年より大手リサイクルショップ、老舗のネット着物リサイクル会社が閉店するなど、中小を含めたリサイクル着物ショップの店舗閉店、廃業が進んでいる。リサイクル着物ショップは、薄利多売型のスタイルであるが、来店客数の減少、消費者の購買意欲の減退に苦戦。
■浴衣は2年連続で苦戦
 浴衣は2020年、2021年と夏祭り、花火大会の中止が続き、2年連続で非常に厳しい状況となった。浴衣を着るきっかけとなる夏祭りなどのイベントがなければ、消費者の購買意欲は大幅に低下する。今年こそは、夏祭りや花火大会の復活が期待される。また夏祭り・花火大会を企画・実施する委員会でも、中止が続けば技術の継承がうまくいかず、衰退が懸念されている。

【調査結果の概要・2021年の市況に関して】
1.市場の概況
 コロナの影響は大きい。2021年には東京オリンピックが開催されたが、大きな特需は得られなかった。着物業界は、お宮参り、七五三、入学式、卒業式、成人式、結婚式、その他慶事、式典、パーティーなど、行事・イベントなどの「ハレの日」、祝い事に支えられている。
 こうした中、七五三・振袖は、他と比較すると健闘している。コロナによる外出自粛があるが、3~7歳の子供を家に閉じ込めておく事は、親としても心苦しい。多くの人が集まるような大規模な行事には参加しにくいが、七五三などのお祝いは家族単位で行える。こうした親心も手伝い、七五三でお祝いする事例は比較的健闘している。また、人数を制限したちょっとしたプールの設置や、小規模な屋台のイベントなどは、予約がすぐに埋まるほど好調であったという。コロナに合わせた柔軟なイベントを開催できる写真館などは業績が好調であった。
東京、首都圏を本社とする大手NCなどは、コロナの影響が大きい。一大消費地である首都圏が苦戦すれば、必然的に着物業界は打撃を受ける。
一方で、地方専門店などは、コロナの影響が少ない地域もあり、催事で健闘している店舗も多かった。特に地方は、大都市と比較してサービス業も少なく、旅行などが規制され、自粛が続くなど消費者の方にもストレスが溜まっている。そうした中、イベントや催事を、感染対策をしっかりと行う事で、健闘している事例も多い。百貨店にも言われる事ではあるが、都市部が苦戦し、地方が健闘している傾向にある。特にコロナに合わせた空気清浄機など健康商材の販売が比較的好調であった。

2.集客・販売方法
◆個人情報保護法の改正と新規集客の苦戦
2022年4月から改正個人情報保護法が施行される。結果として、有効な名簿を取得することがより困難になる。またイベントの中止延期や自粛による、消費者の需要減退により、各社とも新規客の獲得に苦戦している。2022年4月以降は有効な名簿の獲得もより困難になっている。
 また、コロナが始まった2020年から小売・問屋・メーカーを問わず、着付け師も積極的にSNSに参入。特にInstagramやYouTubeの参入者は多く、競争が激しくなっている。ただ、名簿が厳しいのであれば、新規顧客獲得にはネットやSNSを活用せざるを得ない。

着物業界販売チャネル

2.販売チャネル別動向
【ナショナルチェーン(NC)、着物専門店】
 一大消費地である首都圏は、コロナの影響を最も大きく受ける地域となった。健闘する企業と苦戦する企業に分かれた。一方、比較的コロナの影響が軽微であった地方の一番店などは前年対比を超えるなど成長を果たす企業も存在する。地域のお客様に愛される地域密着型の店舗の強さや呉服店の持つ「なじみのお客様」との関係性の強さを感じさせた。またコロナに柔軟に対応した写真館も健闘している。
【百貨店】
 都心部の旗艦店が、コロナによる大きな影響を受け苦戦。大規模なイベントでより多くのお客様を集める方法が、行えなくなっている。株価の上昇に伴い、高級品が好調であるとも言われているが、呉服に関しては苦戦気味。
【リサイクル】
 SNSを中心に、若年層のファンを獲得するリサイクルショップは存在するが、全般的には苦戦。特に実店舗系は、コロナによる自粛と、おでかけ・イベントの中止による消費者の着物を着る回数の減少に伴い需要が減少し、撤退・廃業・実店舗の閉鎖が散見される。
【インターネット販売(EC)】
 インターネット販売会社だけに留まらず、各着物専門店でもネット・SNSを使った宣伝・広報活動が進んでいる。また構造的な変化により、メーカー、問屋の進出事例も増えている。そのため、参入企業が増加しており競争は激化。価格・サービスはもちろん、ネット環境への投資も必要。着物の知識などのブログを併設する所が増えるなど様々な取組が行われている。

なお、下記にPDFを添付。会議などの資料などにご活用いただけましたら幸いです。

着物市場規模に関する調査2022

<18歳成人で成人式はいつに?大半が20歳の成人式を選択>

また、2022年4月より、成人年齢が18歳となる。着物業界としては懸念されていた成人式の実施時期であるが、2021年1月の法務省のアンケート調査では、99.8%の自治体が20歳での成人式の開催を決定。18歳で式を行う自治体は2市町(0.2%)となった。詳細は下記。

18歳成人はいつ?99.8%の市町村が20歳の成人式を選択

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筆者:松尾俊亮

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