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襟と衿の漢字の違いは?

着物の襟は左前右前?

<漢字の襟と衿の違いは?>

着物や衣服に使われる「えり」には二種類の漢字「襟」と「衿」があります。襟は常用漢字ですが、衿は常用漢字ではありません。着物に興味のある方や着物関係の仕事をされている方は、「どっちが正しいのか?どう使い分かるのか?」気になっている方もいらっしゃると思います。少し古い角川の国語辞典(昭和六十一年(1986年)三五三版発行 角川国語辞典)で、「えり」で調べてみますと、

『昭和五十六年(1981年)10月1日に常用漢字表が内閣告示になりました。本辞典では、常用漢字表に則して全面的に表記を改めました。昭和56年11月 角川書店』(角川 国語辞典 3p)

と表記されています。そして、「えり」には、「襟」と「衿」の二つの漢字が書かれていますが、襟が上位で、「衿」には右上に「×」がつけられています。この「×」の意味は、『常用漢字表にない漢字』(角川 国語辞典 『おもな記号』)とされています。衿は人名用漢字になります。

<人名用漢字とは?:名前として記載できるが、常用漢字に含まれないもの>

人名用漢字とは、日本における戸籍に子の名前として記載できる漢字のうち、常用漢字に含まれないものを言います。参照:ウィキペディア:人名用漢字

以前は、棲み分けが行われていたようです。つまり、洋服のえりには「襟」、着物のえりには「衿」が使われていました。そのように学校で指導していた所もあるようです。常用漢字の整理・縮小は、政府によって時々行われており、いつしか「衿」は常用漢字から外れ、「襟」が常用漢字に残りました。

着物では長らく「衿」が使われていたため、その名残もあり今でも衿を使う事が多いです。ただ、常用漢字ではないため、襟の表記もネットでは散見されるようになりました。また「襟」は、「衿」よりも画数も多く、難しい漢字として、「衿」の方が使いやすいという意見もあります。ただ、ネットでは「えり」を漢字変換すると、「襟」が出てくることが多いです。なぜならば常用漢字だからです。

襟と衿どちらが正しいの?:どちらも正しい

ではどちらが正しいのか?筆者はどちらも正しいと思います。「着物では『衿』を使うのよ。」とおっしゃる方もまだ多いと思います。しかし、おそらく襟が常用漢字で、衿は常用漢字でないことをご存じない方が多いです。また、昔から先生や先輩方から「着物のえりは、衿だ」と教えられている方が多いと思います。学校や諸先輩方から教えられた事が変わっていく、という事はなかなか受け入れがたいことでもありますし、現状としては「どちらも正しい」と考えることが自然である、と筆者は考えます。なお、弊社では、着物にあまりなじみのない方は襟を使う傾向があるので、襟と表記します。ただし、衿を使われている商品・名前・ご要望があれば、「衿」と表記します。ご理解の程よろしくお願いいたします。

筆者:松尾俊亮

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