着物肌着市場へ:たかはしきもの工房
たかはしきもの工房
代表取締役社長 髙橋和江氏
宮城県気仙沼市の「たかはしきもの工房」。京染店からスタートし、着物の肌着市場に挑戦し、成長を遂げてきた。コロナという厳しい状況下にもかかわらず、今年は、悲願の新社屋を竣工。敷地内に4棟の建屋を配置、店と工場を完備。新社屋記念パーティーも開かれ、多くの来場者がその新しいスタートを祝った。髙橋社長にお話を伺った。
精力的に活動する髙橋社長。書籍も多く出版し、今年は、新たに「きものの不安をスッキリ解決!」(河出書房新社、2021年2月初版発行)も発行。また、YouTubeでは、「たかはしきもの工房」というチャネルを開設。積極的に消費者に向けて、着物の着方や悩み事にこたえ、消費者の評価も高い。
◆着物肌着市場に参入したきっかけ、参入時の苦労
「参入しようとした頃は、高価格帯の商品がよく売れ、着物肌着はどちらかというとサービス品という位置づけでした。お客様の『きものを着たい』に応えるための肌着を作りたいと思い始めて10年、関心の薄い市場だと確信を持ったことでチャンスはあると肌着市場へ参入したのです。内側からきものを守るという新発想の肌着をご提案しつつ、当時の和装小物には品質表示(ケアラベル)もついていない点など細かい部分の改善も進めました。
ただ、肌着を始めてすぐに売れたわけではありません。始めた1年間は、様々な工夫と努力を重ねましたが、1件も売れませんでした。手ごたえを感じるようになるのに、3年はかかりました」と髙橋社長は語る。
◆消費者に近い感覚で商品を作る
「当社では、商品を自社サイトで販売をさせていただいておりますが、消費者の方と直接かかわることは、非常に大切だと感じています。また今年の9月をもって弊社商品は、お取引様もすべて大手ショッピングモールから撤退します。それは丁寧な販売でお客様を守ること、ブランドを守ることと販売店を守ることにつながると思ったからです。
お客様の感謝の声やお叱りの声、感想などは、商品の改善に役に立ちます。こうしたお客様の声や苦情が聞こえなければ、商品の改善ができませんでした。また自社工場を持ち、製作も行っておりますが、自社工場のメリットとしては、小ロット生産が可能であり、ちょっとしたマイナーチェンジなどは、すぐに対応できる点です。
目に見える材質などは簡単に変えられませんが、パターン修正などで着心地をよりよくする改善は常に続けています。また小ロットのものづくりを行うことで在庫リスクも軽減できます。
もちろん、着物業界の流通構造は非常に大切です。しかし、作り手として、消費者の方と接点を持ち、消費者の言葉を聞くことも、非常に大切なものだと感じています」。
◆東日本大震災から悲願の復興へ
「2011年の東日本大震災で気仙沼も火の津波に襲われました。幸い、家族やスタッフに人災はありませんでした。でもそれが、大変な目に遭った方に対して申し訳ないと思ってしまうほどの災害でした。
店の商品や預かり品がすべて、津波とともに流れてきた重油混じりの海水と魚に溺れてしまったのです。借り入れをして改装したばかりの店舗でした。もう店を続けることはできない、と感じたこともありました。ただ、お客様の温かい言葉に支えられて、ここまでやってくることができました。新社屋を竣工する際、『ここに訪れてくださる方が、夢を語れるような素敵な場所に』という想いで、私たちなりに工夫を凝らして新社屋を今年竣工させていただくことができました。
今はコロナの厳しい状況です。ただ、つらい時こそチャンスであると考えております。新商品の開発、そして新しい切り口の商品販売の準備を進めていきます。底が来れば、後は上がっていくしかありません。礼装品もイベントなどの中止で厳しいと聞いておりますが、作らなければなくなってしまいます。底を打てば上がると信じて、健全に夢を持って、社業に取り組んでまいりたいと考えております。ぜひ機会がございましたら、当社にお立ち寄りください。楽しく夢を語り合いたいです」と髙橋社長は、明るく語った。
お問い合わせは下記より。
住所:宮城県気仙沼市所沢321-1
TEL:0226-23-1111
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