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生産者はなぜ儲からないのか?着物市場の動向と今後の流れ

<着物の市場動向と今後の流れ:集客力>

ステータスマーケティング10月号に掲載した「琉球絣事業協同組合」にて行ったセミナーの内容を掲載する。着物の生産者、作り手向けの資料となる。また着物業界関係者、市場流通のあり方に関する資料にもなる。ご参考になれば幸いである。

<着物業界の市場動向>

<概論>


ピークは1980年の約1.8兆円(きものと宝飾社推計)。2007年には4700億円となり、2017年には、2880億円となった。小売市場規模はピークの約1/6。京友禅生産量のピークは昭和46年(1971年)の約1,650万反。 現在(2017年)の生産量は、約37万反。ピークの約2%。これは呉服店が取り扱う品目を変える等、売上の減少を抑えているからである。(例:着物レンタル、ジュエリー、アパレル、健康商材、フォトスタジオ、その他賃貸業など)

<昨今の4つの傾向>

物販以上にレンタル需要が高まっている。(所有願望の減退、レンタルにてその時々の式辞を楽しむ:例、結婚式、夏祭りの浴衣など)街着レンタルはもちろん、振袖市場においても同様で、成人式用振袖・七五三のレンタル比率の伸長、ママ振・姉振りの伸長による物販の停滞、またSNSの発達により「インスタ映え」する綺麗な写真は需要がある。「メンテナンスが大変」、「汚れたら困る」、「自分で着られない」、「自分で洗えない、たためない」のでレンタル需要が高まっている。

委託販売が主流となり、メーカー・問屋の苦戦(新作を創るメリットの減退。商品流通の減退。商品の滞留)
委託販売が主流となり、売れたものしか支払いが発生しない傾向がある。作っても売れないのであれば作る事ができない。最近では、生糸などの原材料の高騰も続き生産を控えるメーカーは多い。また、メーカー、問屋、小売も在庫を抱える為、作らなくても売り場、催事が回るという点もある。

ネット/ウェブ/SNSの発展による上代価格の下落・及びエンドユーザーの知識量の増加
最近では、催事で成約した商品が、翌日、翌々日にキャンセルされる事が散見される。これはネットでブランド名・商品を検索する事で、ネット上代が簡単に検索する事ができるようになったことも一因。
ネット価格と比較してあまりに上代価格が乖離するとお客様は、思い直してキャンセルをする。 また昨今のメインターゲット層(50~60代女性)もネットを見る事が増え、気軽にネットで情報を検索している。

ネット通販の伸長
イオンの岡田社長も中期経営計画で述べたように小売業も今、アマゾンをはじめとするネット通販の脅威にさらされている。あらゆる有人店舗型の小売業が、ネット通販に侵食されている。経費(家賃・人件費)の観点から、ネット通販とのし烈な価格競争により、苦戦している。

<一つの方向性として>

一部の小売店・流通業が、ホームページなどで「安く仕入れられる理由」とうたっているように、今、流通業の中間マージンが、ネット事業、ECサイトなどの参入により重い負担となっている。ネット、SNSなどの発展により、流通産業は一つの危機に直面する。メーカーがエンドユーザーにつながる事が、比較的容易になったからだ。
従来の<メーカー⇒問屋⇒小売店>という形式から、<メーカー⇒小売店>という現象は始まっているが、今後発展する可能性が高いのが、<メーカー⇒エンドユーザー>という形式である。

もちろん、小売店舗がメーカー・問屋機能を吸収する場合もある。
中間マージン・経費の節減の最終形は、メーカー⇒エンドユーザーになることは、容易に想像できる。

<催事型販売での問屋の総合力>

ただ、大手の小売店や特殊な小売店を除き、大半の小売店は、問屋から仕入れを行っている。というのもコーディネート・一式 とトータルで商品を供給してくれ、支払い条件なども小売店に配慮できるからである。既存の小売店の販売手法は催事である。
また対面販売では、販売力のあるコーディネーターの力に依存する事が多い。優秀な販売員が必要となる。
「問屋不要論」という言葉が使われて久しいが、依然として問屋が機能しているのは、こうしたメーカーへの配慮、小売店への配慮を行ってきたからである。

有力なメーカーも小売店に直接は行かず、問屋を一度経由させて取引を行う事が多い。
というのも、メーカーが問屋を一度かませることにメリットがあるからである。(支払い条件、取引条件など)

<小売・問屋とは:流通業の存在意義>

元来、問屋の意義とは地方で家内制手工業であった作り手の商品を集め、支払いをし、全国に商品を円滑に流通させる機能、及び作品の調整、コーディネート機能である。よって流通業とも呼ばれる。
沖縄の作り手が、北海道まで自分で作った商品を行商で持っていく事には大変な労力がかかり、あまり現実的ではなかった。
こうした輸送・販売を代行してくれる問屋は非常に便利であり、キャッシュフローを円滑にしてくれる大変ありがたい存在。 今もその役割を担っている。
しかし、今はアマゾン、楽天をはじめとするネット通販企業、及びウェブがある。
やろうと思えば、作り手がネット上にページを作り、全国の顧客から注文を受ける事が出来る。クレジットカード、 運送業も整備、洗練され、わざわざ北海道まで足を運ぶことなく、ネット上で販売を完結させることは容易となった。
ただし、着物は高価なファッション商品である。依然として対面販売(催事)に依存する商品である事も忘れてはならない。
それゆえ、トータルで商品を供給できる問屋が、機能している点も事実である。

<他産地や流通現場での新たな取組>

今、ネットを活用し結果を残しているメーカー、小売店も多い。参考事例として紹介する。

・龍村美術織物(京都市:西陣織メーカー)
西陣織の名門。芥川龍之介にも称賛され、宮内庁で使用される作品を謹呈する。公式オンラインショップを立ち上げ、ネット販売にて、ふくさ、帯、和装小物などの販売に力を入れている。

・京越(京都市:SPA(メーカー、問屋、小売)
自社の工場を持ち、EC(ネット販売)で自社製品を売る。問屋にも商品を提供。廉価な和装小物、襦袢などを中心に展開。 新興企業であるが、おおよそグループ全体で30億近くを売り上げるなど、非常に先進的なスタイルをとる。楽天、アマゾンなどで和装部門で唯一受賞されるなど、大手ネット通販で大きな実績を上げる。また、街着レンタル「京越」やレンタルショップも展開する。

・あづまや呉服店(愛知県西尾市:小売店)
動画サイト「ユーチューブ」で、毎週決まった時間(土曜日21時~22時)に生放送を配信(あずまやきものひろばてれびじょん)。毎週決まった時間にこつこつと生放送を続ける事で(2011年~)、固定の着物ファンを獲得。
毎週決まった時間に定期的に放送をする事が重要であるとのこと(固定ファン獲得、維持のため) 動画サイト、SNSを活用し、こうしたSNSの告知のみで、京都でイベントを開催。3日間で300名を集めた。
いずれもSNSでつながった全国からのファン。北は仙台、南は宮崎からお客様が集まった。

<自社・自分をブランディングする必要性:ネット、SNSの活用>

・ネットで自社製品のPR,また自分自身をPRする事が必要になった。またそれが可能な時代である
・有名な日本人タレントとしては、ローラ(ツイッター:400万人)、有吉弘行(ツイッター:700万人)など一言つぶやくだけで大きな反響を得る事が出来る。もちろん限られたトップスターを目指す必要はないがほとんど経費のかからないSNSで、自社、自社製品、自分自身を売り出す必要は、小売・メーカーを問わず今後必要であるといわざるを得ない。

<物販において:有益なSNSとは>

着物ファンを想定すれば、フェイスブックが有力である。SNSを活用する多くの企業がフェイスブックに力を入れる。 50~60代の女性が、着物産業の主力ターゲットである。若い人が増えている事は否定しないが、購買力が限られている。
フェイスブックは、実名登録の方が多く人間関係を構築しやすい。ツイッター、インスタグラムはニックネームが多く誰か分からず、若い方が多い。購買力の低い若年層をターゲットにしてもあまり有益な結果は得られない。
ただ、近年はライン@も有力視されている。
フェイスブック>ツイッター>ライン@>インスタグラムと弊社は考えている。

弊社は、フェイスブック公開グループ<着物―きものー>、<和服を世界遺産に!>という公開グループを管理している。
2つ合わせて、約29,000人の着物ファンが参加。着物ファンが入ってくるため、より密度の濃いグループである。

<着物生産者がなぜもうからないのか?:販売を他者に依存しているから>

生産者がなぜもうからないのか?おおよそ3つの課題がある。

1、着物市場には大量の在庫が眠っている(メーカー、問屋、小売店の在庫、エンドユーザーのたんすの中)から。 上代ベースで言うなら、5兆円とも10兆円とも言われる在庫が眠っている。各流通段階でも、在庫に四苦八苦している。
アパレルで言うところの流行の柄、デザインなどはあまりなく、着物は古典柄、伝統的な柄が好まれるので、リサイクル品、在庫品でも十分に対応ができる。つまり現在、仕入れなくとも在庫で催事を回すことができる。
市場で安く出回る在庫品(リサイクル品)が、競合商材となっている。在庫品に勝る魅力が必要となる。

2、価格決定権を持たないから
着物産業は、最終価格(上代)の決定権を小売店が持つ。極端な話、30万円で仕入れたものを100万円で売るか、300万円で売るかは、小売店が決める。仕入れてもらう立場のメーカー、産地問屋、問屋は、競合他社との戦いもあり、そろばん勝負(値段勝負)になる所も多分にある。また、最近着物の単価は下落傾向にあり、これに歯止めがかからない。最終的にしわ寄せは生産者に向かう。

3、最終顧客(売り先)を小売店、または問屋が持っているから
価格交渉で厳しい局面を迎えたとしても、複数の売り先を持っていれば、競争させて高い値段で買ってくれるところに売る事ができる。ただ、作り手は、多くの場合、売り先の選択権が狭く、既存の取引先に依存せざるを得ない。
ただ、これは着物産業全体に言える事であり、小売店も問屋などの各流通段階もまた、売り先の選択権が減っている。

<生産者が適切な利益を獲得するためには:選択肢の拡張>

販売先の選択肢が狭く、価格決定権を持たず、販売を他者に依存するので適切な利益を獲得できない。
先ほどのSNSになるが、自分でエンドユーザーに売るというのが一つの選択肢である。
自社販売するのであれば、上代設定は自分で決定できる。もちろん、取引先への根回し、調整などは考慮すべき。
今、問屋・メーカーなども、調整、根回しをしながらも、川下(小売)に挑戦しているところが増えている。
ネット販売、SNS活用が盛んにどの業界でも叫ばれているが、当然である。なぜならばそこにはメリットがある。

<ネット通販、ネット販売のメリット>

・初期投資が圧倒的に少ない(都心部、東京などに実店舗を持とうとすれば数千万の投資になる)。ネットはやり方によって無料で展開、情報発信ができる(SNSなど)。弊社のフェイスブックは、ほとんど無料であるが、総計3万人を獲得した。
・失敗しても撤退が容易。(初期投資が少額であるため、撤退しやすい。東京に店舗を出して失敗すれば、引くに引けない)
・全国の顧客に情報発信できる(実店舗は、出した店舗の近隣、商圏人口に販売先が限られる。ネットは一気に全国に広がる)
・メリットではないが、今非常に厳しい市況であり、メーカーも、問屋も小売りもある程度わかっている。
メーカー、作り手が多少、小売市場に参入しても気づかれにくいし、気づいても黙認する傾向がある。
※もちろん、全てではない。トラブルになるリスクもある。よって懇意にしている取引先には根回しがあったほうがよい。

<ネット通販、ネット販売のデメリット>

・色々投稿しても、始めたばかりの頃は誰も見てくれていないので、挫折しやすい。諦めやすい。
・個々人の能力にもよるが、全く売れなくても3年は育てる覚悟を持ってやった方がいい。・1年目は0である覚悟を持った方が良い。2年目に一つでも売れれば、儲けもの。くらいの気概がないと続かない場合が多い。
・<忙しいからできない>価格決定権を持ち、自社自身がエンドユーザーに売り込むというのはそれほど難しい。
小売販売、エンドユーザーに対応する、というのは今までのやり方と全く違う。文化が違う。川下に進出するメーカー、問屋はあるが、成功せず失敗するところもある。まったく文化と商売の仕方が違うからである。
何もかもが違う。それくらいの覚悟がないと精神的に厳しいかもしれない。まず、1年目は人が来ない。そう思った方がよい。

<商売で最も必要な事:集客力>

よく言われる事であるが、催事に必要なのは、素晴らしい商品力ではない。集客人数である。素晴らしい逸品が集まっても、1週間催事をしても、来場客数が0であれば売り上げは0である。逆に人が集まれば催事は成功する。
催事では特に集客人数が綿密に計画され、来場客数の確保が目標とされる。小売店の主業務である。催事の売上は以下となる。
集客人数(人)×平均単価(万円)=売上
極めてシンプルである。問屋、小売が最も求める企画・商品は集客できる企画・商品である。もちろん、平均買い上げ率(%)、平均来場客数などもある。例えば催事の売上は以下のようになる。
・100人(来場者数)×30万円(平均単価)×0.3(平均買い上げ率:100人中買った人の割合)=900万円
200人きたらどうなるか。平均単価、買い上げ率に多少の変動はあるが、変わらなかった場合
・200人×30万円×0.3(買い上げ率)=1,800万円
となる。集客こそが最も難しく、お客様を動員することのできるイベント、商品が最も求められているものである。
今、メーカー、作り手にも集客する力が求められている。集客力とは知名度、ブランド力、企画力である。
よって、ネット、SNSを作って自社、または商品の知名度、ブランド力を向上させることは最も必要な事であろう。「人を呼ぶ力」が最も今求められている。集客力があれば、問屋・小売から注文が殺到するであろう。

沖縄織物産業が、一層の振興を図るためには、沖縄織物が「人を呼ぶことのできるブランド力、集客する力」を獲得する事が最も重要だと考えるがいかがだろうか。それを他社、政府に依存せず、自らで創り上げる事が全産業において求められている。
問屋、小売店に依存するだけで生き残れる保証はない、と考える。


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