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着物業界ランキング掲載「着物年鑑2019」:価値観の変化

着物業界ランキングを掲載する「着物年鑑2019」。2019年の着物業界の動向

着物年鑑は着物業界の市場規模、着物業界大手のナショナルチェーン、専門店、百貨店、ネット通販、リサイクル、量販店など様々なチャネルの動向を掲載。着物業界の現状を知る事ができる。

2019年の着物業界の動向を要約する。

◆2019年着物業界の動向:消費者の価値観の変化

着物業界はここ数年間見られないほど、厳しい市況となった。関東地方の大型台風など、自然災害などが大きな傷跡を残した。また着物販売では、新規顧客獲得に苦戦、平均単価の下落、正絹フォーマル品の苦戦などが挙げられ、M&Aなどの再編も進んだ。

ただ、最も大きな変化は、今年の後半から、各小売、問屋、メーカーの経営者から聞かれるようになった「価値観の変化」という言葉である。順を追って述べたい。

1、浴衣市場の苦戦:物販の苦戦

2019年の浴衣市場は、例年になく厳しい状況となった。2018年の酷暑と比べ、7月まで気温が上がらず、出足が悪かった事もある。2019年浴衣売上市場規模は、昨年対比87.8%の98.6億円(きものと宝飾社推計)となった。2年連続で厳しい売上推計となっている。

各チャネル全体が厳しい結果となっている。また1万円以上の中・高価格帯の浴衣販売が苦戦している。浴衣は着物業界では、比較的廉価であるため、ネットと相性が良い。消費者は実店舗販売からEC・メルカリなどのCtoC、浴衣レンタルなどに移動している。よって実店舗は、全般的に苦戦。ただ、ネット販売も大手・上位層に顧客が移動している。そのため、ネット市場においても、価格競争が激しく、物販全体が苦戦する結果となった。市場を押し下げる主たる要因は、単価の下落である。

2、ECレンタル事業への参入

2019年には、カジュアル着物レンタルなどにとどまらず、EC上でフォーマル着物レンタル、振袖レンタルなども増加しており、カジュアル、フォーマルという垣根を問わずにレンタル市場への参入企業が増加しており、競争が激しくなっている。特に振袖は、成人式という需要の読めるイベントが存在する為、健闘している企業は、振袖事業に力を入れている。

2、ストレスフリーなサービスを求める声

「着物」への需要は、「着物」そのものから、「着る場と体験」へ、「色・柄・材質」から、「手軽さ・便利さ・サービス(着付け、ヘアアレンジなど)」に変化している。また、着付け、保管、虫干し、クリーニングなどの煩わしさを避ける消費者が増えている。

着物を自信をもって自分で着られる方は少ない。よって「着つけサービス」は重要である。成人式の振袖では、着付けサービスがセットになっていることが一般的である。浴衣に関しても、着付けをしてほしいという需要があり、浴衣でもレンタルショップが健闘している。この点も、着付けサービスのない販売だけの店舗が苦戦する理由である。

着物を初めて購入する30代~40代の女性でも、はじめての着物では、リサイクル着物や、10万円前後の「洗える着物」を求める方が多い。理由は「正絹の着物が良い事は分かってはいるが、クリーニングやメンテナンスのやり方が分からないし、メンテナンス費用もいくらかかるか分からないから、洗える着物が良い」。

3、価値観の変化:「所有」という価値の減退

最も大きな変化が価値観の変化である。日本だけでなく、世界全体が「循環型社会」、「環境」に価値を置き、「大量生産」のステータスの低下、「持続可能な消費」がステータスを得るようになった。アメリカのファストファッション大手であるフォーエバー21の日本撤退も記憶に新しい。手頃な値段は大切ではあるが、安ければ売れるというわけではない。

環境活動家の17歳のグレタさんも象徴的な人物として登場した。様々な意見があるが、実際に社会は、プラスチックストローの廃止など、脱プラスチック、環境への配慮に動いている。また「エシカル(倫理的な)ファッション」という環境に優しいものが、ステータスを得るようになった。これは着物だけではなく、アパレル、自動車も同様であり、レンタルやシェアを利用する事に抵抗がなくなっている。物を持つことが、ステータスではなくなってきている。

「所有」か「サービスを利用するか」という選択肢が消費者にあり、消費者は自分にとって、快適な選択肢を利用する。

このような価値観の変化は、物に満ち溢れた世界で、繊維業界や着物業界、小売業にとって大きな脅威である。こうした価値観の変化に対して、対応していく必要があり、新しい付加価値が必要になってくる。便利さ、手軽さ、環境への優しさも一つの付加価値となる。特に着物は、使い捨てではなく、「親子三代で継承できる」という特筆すべき価値を持っているのではないだろうか。

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