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和装の持続的発展のための商慣行のあり方について

5月29日、第4回和装振興協議会において「和装の持続的発展のための商慣行のあり方について」という報告書が発表された。この報告書は和装振興協議会商慣行分科会(矢嶋孝敏座長)によって取りまとめられた。厳しい市況が続く和装業界において、商慣行への提言がなされたものである。今回は抜粋した要旨を掲載する。

5月29日和装振興協議会において報告を行った和装振興協議会商慣行分科会座長の矢嶋氏は「今回の報告は、平成28年9月に示された『未来志向型の取引慣行に向けて』(経済産業省)と同調するものであります。前文には『川上・川中・川下の各事業者が適切に機能を発揮し、サプライチェーン全体にわたる適正な取引の確保と付加価値の向上を図るとともに、消費者本位の商品・サービスを提供し、継続的な信頼関係を構築する』とあります。本報告書は、「サプライチェーン」という今まできもの業界には無かった考え方が入ることによって、事業者間取引と消費者との取引をリンクさせ一体としてとらえるという視点があり、これがかつてなかった特徴です」と語った。

矢嶋座長

以下に指針全17条を掲載する。

和装業界の商習慣に関する指針―和装の持続的発展のために―
(※注記は一部抜粋)
第1 事業者間取引
【サプライチェーン全体での付加価値の向上】
1.取引先優位な地位に立つ事業者が取引先事業者に不利な取引条件を押し付けるのではなく、サプライチェーン全体で(川上・川中・川下の事業者全体で)付加価値の向上を図り、適正な利益の配分及びコストやリスクの分担に取り組む。

【取引対価の決定】
2.取引対価は、取引数量、納期の長短、代金の支払方法、品質、材料費、労務費等の要素を考慮し、合理的な算定方法に基づき、受注事業者の適正な利益を含むよう、受注事業者及び発注事業者が協議して決定する。

【取引の書面化】
3.全ての取引について、契約書、発注書、請求書、納品書等により書面化する。

【代金の支払】
4.代金はできる限り現金で支払う。手形により代金を支払う場合、手形のサイトは90日以内とし、将来的には60日以内とするよう努める。
5.手形により代金を支払う場合、その現金化にかかる割引料等のコストを受注事業者に負担させる事のないよう、代金の額を取引先事業者と十分協議して決定する。

【歩引き取引・延べ払いの廃止】
6.歩引き取引は、いかなる名目であれ、不透明・非効率な慣習であり、これを廃止する。またいわゆる「延べ払い」を廃止する。

【不当なコスト負担】
7.発注した商品について自己都合により正当な理由なく返品や受領拒否を行い、または販売員の派遣や協賛金の支払い等の経済上の利益の提供を強いるなど、受注事業者に一方的に不当なコストを負担させることを禁止する。

【販売方式の決定】
8.販売方式(買取販売または委託販売)については、製造事業者及び販売事業者が適切にコストやリスクを分担し、双方で付加価値の向上を図る観点から、個々の商品の特性等も踏まえつつ、双方で十分協議して適切な販売方式を決定する。その際、委託販売は、製造事業者が金融コストや売れ残りリスクを負担する一方、販売事業者はこれを負担しないいものであることに特に留意するものとする。

第2 消費者との取引
【消費者本位の商品・サービスの提供】
9.消費者本位の商品・サービスを提供することにより、消費者の和装に対する理解の促進、消費者からの品質・価格等に対する信頼性の向上を図り、消費者との継続的な信頼関係の構築に取り組む。

【消費者にふさわしい商品の販売】
10.消費者の知識・経験、属性、ニーズ等に照らし、消費者にふさわしい種類・品質・価格の商品を販売する。消費者にとって高額と考えられる商品を販売する場合、消費者に真にふさわしい商品を販売しているか、特に留意するものとする。

【消費者に分かりやすい説明】
11.消費者との間の情報や交渉力の格差(非対称性)に鑑み、商品の品質・特性、価格の合理性等、消費者が購入を判断するために重要な事項について、消費者の知識・経験、属性、ニーズ等に照らし、分かりやすく説明する。消費者にとって高額と考えられる商品を販売する場合、若年者や高齢者に販売する場合については、上記事項について消費者の十分な理解を確実に得るものとする。

【産地等の明瞭な表示】
12.製品の産地・仕立地(縫製地)、組成(絹、綿、ポリエステル等)、製法(手描き染、型染、インクジェット等)、事業者の連絡先等を明瞭に表示する。

【価格の適切な表示①】
13.根拠のない「通常価格」等を提示した後、「値引き」等を行って購入を誘引し、または、根拠のない「問屋価格」や「特別価格」等を提示して購入を誘引するなど、商品の販売価格が実際と異なって安いという印象を消費者に与えるような表示を禁止する。
(注)景品表示法は、商品の販売価格等の取引条件について、実際のものや他の事業者のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示を、不当表示(有利誤認表示)として禁止している。二重価格表示(販売事業者が自己の販売価格に当該販売価格よりも高い他の価格(比較対照価格)を併記して表示するもの)に際し、比較対照価格について虚偽の表示やあいまいな表示を行う場合や、割引率や割引額の表示に際し、任意に設定した価格を算出の根拠として当該表示を行う場合等については、不当表示に該当するおそれがあることを認識すべきである。

【価格の適切な表示②】 
14.同一の商品について、消費者の知識・経験や販売チャネル等の如何によって不当に差別的な(高額の)価格を提示することを禁止する。

【価格の適切な表示③】
15.反物の価格表示に際しては、消費者のニーズ等に応じ、仕立代、小物代等を含めた、消費者にとっての最終的な負担を分かりやすく説明する。

【適切な販売手法】
16.セミナーやイベント等に参加を募る際、その場で商品の販売を行う意図がある場合、参加者に事前に当該意図を明確に示すものとする。
17.消費者を長時間拘束し、または威迫するなど、強引・執拗な勧誘を禁止する。
(注)商品を必ずしも購入する意思のないまま参加し、または、商品の販売が行われることを知らされないまま参加したセミナー(着付け教室等)やイベント(展示会等)等において、強引・執拗に勧誘され、やむを得ず購入した(購入させられた)といった事例が指摘されている。こうした販売手法は、販売事業者の目先の売上や利益を確保することができたとしても、結局は消費者の不信感を招き、「きもの離れ」をもたらすことを認識し、消費者との中長期的な信頼関係の構築に資する販売を志向すべきである。
 特定商取引に関する法律においては、店舗等以外の場所での展示販売の他、店舗等での販売であっても、電話や郵便等で販売目的を明示せずに消費者を呼び出したり、「あなたは特別に選ばれました」等、他の者に比べて著しく有利な条件で契約できると消費者を誘って呼び出したりして契約させる場合(いわゆるアポイントメントセールス)、訪問販売として規制されており、消費者が契約締結の意思がないことを示した場合に、そのまま勧誘を継続すること及びその後改めて勧誘すること(再勧誘)、契約を締結させるため、威迫して困惑させること等は禁止されている。

なお、発表された原文は、経済産業省ホームページの「和装振興協議会 第4回配布資料 資料4」

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/wasou_kyogi/pdf/004_04_00.pdf

に掲載されている。

和装振興協議会

和装振興協議会商慣行分科会
委員名簿(50音順 敬称略)
浅子 堅一郎:株式会社三越伊勢丹 呉服・美術統括部 呉服商品部商品部長
粟野 修也:粟野商事株式会社 代表取締役社長
きくち いま:エッセイスト・イラストレーター
上達 功:株式会社丸上 代表取締役社長
富川 匡子:株式会社ハースト婦人画報社 美しいキモノ編集長
長瀬 美由紀:株式会社京都きもの市場 経営企画部マネージャー
中村 健一:東京山喜株式会社 代表取締役社長
藤井 浩一:藤井絞株式会社 代表取締役社長
宝子山 賢祐:株式会社松屋 代表取締役社長
舞鶴 一雄:株式会社西陣まいづる 代表取締役社長(西陣織工業組合 副理事長)
矢嶋 孝敏(座長):一般財団法人きものの森 理事長(株式会社やまと 代表取締役会長)

ステータスマーケティング8月号に掲載。

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