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着物業界上位30社シェア推移:SNSと集客の6つのポイント

きものと宝飾社では、毎年「ステータスマーケティング1月号」(12・1月合併号)にて、着物業界の和装売上高を集計、発表している。着物小売店大手30社が占める着物業界のシェア(占有率)も集計。過去5年の集計を比較。大手30社(大手チェーン店(NC)、ローカルチェーン店(LC))のシェアが上昇し、全体の54.1%を占める形になった。

◆大手着物小売店30社着物売上高及び着物小売市場規模占有率(シェア)

着物業界上位30社シェア推移

着物業界は、斜陽産業といわれて、はや30年以上が経過している。厳しい市況の中、統合・廃業が進み、ここ数年は、上位30社の占有率は上昇傾向にある。ただし、2020~2021年は、コロナ禍により首都圏を本社とするNC(ナショナルチェーン)、大手百貨店などは苦戦気味。2021年は、地域で健闘する着物専門店、地域一番店が、この厳しい状況下で、増収増益を果たすなどコロナによる変化が見られる。
ただ、着物業界はしぶとい、したたかな力も持っている。それは、30年以上ずっと斜陽産業といわれており、その厳しい市況を生き抜いてきた企業が多いからである。不況に耐性がある。「景気がいいことはなかったため、追い風が吹くなんてどうしていいか分からない」と冗談を言う経営者も存在する。不景気慣れしているタフな経営者も多い。

【2018年からの情報発信・集客方法の変化】
2018年に同じタイトルの記事を書いたので、その変化を掲載する。

着物業界上位30社シェア推移(2018年):モノからコトへ

① DMの効果:SNS・ウェブでの情報が見てもらえないため、やや復権

DM(ダイレクトメール)の効果が低下していると言われて久しいが、DMはある一定の効果がある。というのは、メールやSNS、スマホを活用した集客情報は、増加の一途をたどり、そもそも発信しても見てもらえない事例も散見されるようになった。消費者一人が受けるネットからの情報は膨大であり、単純に埋もれてしまう。その点、DMは家に届く。目につく。見てもらえる確率は高い。既存顧客への発信は、比較的安定している。また最近は廉価に印刷できるサービスも整っている。依然として、DMはある一定の効果を生んでいる。DMを廃止した企業も、DMを復活させるなど、使い方にも工夫が求められている。

SNS、電話をしない集客・告知方法「ゆかたdeミシガン」

また、消費者の行動は、DMを確認後ウェブサイトを確認する、などの確認を行うようになっている。最近では、QRコードを付けているDMも多い。新規客の行動は、DM→ウェブサイト(SNSなど)→来店又は利用、などの行動をとることが多い。こうした一つの手法にとらわれないクロスメディア戦略が必要となっている。特に実店舗型の企業は、近隣への販促は、依然として重要である。

② SNSに関して:SNS疲れで、放置、撤退する企業が増加
ツイッター、インスタグラムが普及し、そのブランドが浸透したため、各社こぞってSNSに参加。情報発信を続けてきたが、大量のアカウント・情報が乱立。激戦区となり、単純に情報発信をしても注目してもらえない、見てもらえない。という課題が生まれた。見てもらえない投稿を続けることは苦痛である。インスタグラムでフォロワーを獲得することはかなり難しくなってきている。限られたインフルエンサーが、より多くのフォロワーを獲得し、多数が埋もれるような状態となった。

SNSの特徴の一つとして、企業アカウントよりも、個人アカウントのほうが圧倒的に強い。YouTubeでイメージしていただきたい。有名なインフルエンサーと呼ばれる人は、ほとんど、個人またはグループである。有名な企業インフルエンサーというのは、極々限られた一握りである。
人は組織を好きになるわけでない。人はやはり人を好きになる。したがって、企業アカウントは不利である。
またフェイスブックページに関しては、フェイスブックが仕様を変更。近しい人・友達のタイムライン表示を重視するようになり、会社ページの比重は大きく削減。目に留まりにくい状態となった。

このような条件変更及び競争過多により、SNSに効果が見込めないと判断した企業は、更新をストップしている。意図的にそうしているのか、惰性で放置しているのかはわからない。ただ、おそらく惰性で放置しているのだろう。また自動で決まった投稿を繰り返すボットのようなアカウントも散見する。企業側にもSNS疲れが見られる。全く更新しないSNSのアカウントがあるのであれば、率直に言うと、閉鎖したほうがよい。なぜならば、全く更新されないSNSをお客様が見ると、「この会社大丈夫かな?」と不安に思うからである。

③ 集客方法の変化:Googleマイビジネスの躍進、動画、Zoomの活用も

Googleマイビジネス(グーグル上での見え方)

実店舗の呉服店やフォトスタジオなどは、特にGoogleマイビジネスに力を入れるようになった。Googleマップや、Google検索結果に自店舗のビジネス情報をダイレクトに表示できるGoogleマイビジネスは、集客力を持つため、ここ1~2年、各社ともに積極的に力を入れている。特に振袖顧客や新規客向けの施策である。基本情報は無料で公開できる。まだ更新されていない企業は、更新をお勧めする。ウェブサイトも無料で作成できるなど、活用の幅は比較的広くお勧めできる。便利である。
またラインでの顧客とのコミュニケーションは成功事例をよく聞く。電話はなかなか出てもらえないため、ラインで顧客に直接情報を発信することにより、コミュニケーションにつなげている企業は多い。特に振袖のお客様のとのやり取りなどは、ラインを活用することで、比較的容易に連絡が取りあえる。電話を嫌がるお客様も、ラインならば確認してくれる。ライン活用は、ますます重要になってくるであろう。
またインスタライブを活用したPRや集客、Zoomを活用した商品や産地の紹介を行う企業も増えている。コロナによる緊急事態宣言が長く続いているため、Zoomはより多くの方に活用されるようになった。Zoomでのセミナーなどは増加している。

④ 着物市場はニッチな市場であることを把握する
もう一つ大切なことであるが、着物市場はニッチな市場である。街中で、10名の女性を観察いただきたい。10人のうち、何名が着物を着ていただろうか?1名見つければ儲けものである。対象を100名にしていただいてもよい。100名のうち、1~3名程度、着物を着ている方を見つけられたら儲けものである。その程度に狭い市場であることは改めていう事ではないが、自覚すべきである。
SNSに関しても、必要以上に大きな数字を目標にしないほうが良い。理想とのギャップに苦しみ、よほどの志がなければ諦めてしまうからである。身の丈に合った目標を立てるべきである。さもなければ、運営者が気疲れを起こしてしまう。中庸が大切である。

⑤ 気疲れを起こさず、淡々と継続することが大切
相撲と同じで、「一番一番自分の相撲を取るだけです。」という精神で、淡々と継続することが大切である。継続こそが力となる。癇癪を起して、途中で放棄しないこと。
難しいことではあるが、これが大切である。「あきらめたらそこで試合終了ですよ。」の精神が重要である。もちろん、より有益なツールを発見して、そちらに傾注するのであれば、それは問題ない。

⑥ 分析の重要性
分析も重要である。同じようなジャンルで、人気を得ているアカウントが「どんな内容」の投稿をしているかを、確認し、分析し、学ぶべきである。着物企業のアカウントは、商品の宣伝または催事の告知ばかり投稿するアカウントも多い。それで効果が出ているのであれば問題ないが、誰にも見てもらえていないのであれば、投稿する内容を間違っている、と考えて、分析・改善するべきである。人気アカウントを見習うべきである。消費者・お客様が何を求めているのか把握しなければならない。

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筆者:松尾俊亮

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