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着物の反物に必要な蚕のまゆの量と絹の量:0.9㎏の絹が必要

◆着物の反物を一反作るために必要な蚕の繭の量

蚕の繭(まゆ)の必要量:約4.9kg(約2,600粒)⇒生糸の量:約900g⇒絹織物:約680g(制作、加工工程でロスあり)※詳細は下記に掲載。

着物の反物に必要な蚕の繭の量
着物に必要な蚕の繭の量

 

蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会は、平成29年(2017年)9月2~6日まで、西陣織会館にて「純国産 宝絹展」を開催した。西陣織は応仁の乱を機に「西陣」と称されて今年で550年を迎える。その西陣において純国産絹の魅力を伝える「純国産宝絹展」が開催された。

◆着物の蚕を育てる養蚕農家は日本に何件存在するのか?

田中種株式会社の田中社長は、「日本の養蚕農家が2016年は380件と、日本の養蚕が途絶えつつあります。純国産絹糸は総需要量の1%以下となっていますが、日本の絹糸を絶やさぬよう、手袋、布団などの様々なものに活用して提案しております」と語る。また蚕の吐く糸(繭糸)は1,300~1,500mもあり、どれほど力強く引き伸ばしても、簡単に切れることがない。実際に絹糸を手で引き延ばして実演してくれた。非常に柔軟性を持つしなやかな糸である。

◆着物の反物にどれくらいの蚕のまゆ(繭)を使っているか?

着物の反物(たんもの)を作るのに、どれくらいの蚕と繭が必要になるだろうか?一反分をつくるために必要な蚕の繭(まゆ)の数は約2,600粒。蚕に繭を作ってもらう。繭(まゆ)は重さにして約4.9kg必要であることが、実際に繭を展示して説明された。精練過程で、繭4.9㎏は生糸約900gとなり、製作や過程でロスが生まれ、絹(シルク)の着物はおおよそ680gになる。

蚕の繭(まゆ)の必要量:約4.9kg(約2,600粒)⇒生糸の量:約900g⇒絹織物:約680g(制作、加工工程でロスあり)

山梨県産の絹糸「甲斐絹(かいき)」を再生させた㈱甲斐絹座の前田社長は、絹を使った傘を出展。カーボンファイバーを使用した軽くておしゃれな傘が注目を集めた。また会場内には生きた蚕も展示。

◆蚕の主食と寿命

蚕

蚕の主食は桑の葉であり、寿命はおよそ50日間。非常に儚い命である。ただ、近年では品種改良が進み様々な蚕がいる。

「蚕は約1,500種いて、種類によってキャベツやリンゴを食べる蚕もいます。遺伝子工学で研究が進んでいます」と関係者は語った。黄色やオレンジ色など様々な繭が展示された。

蚕の恵みを受けて絹が作られ、着物が作られていく。その尊い命に感謝しながら、楽しく着物を大切にして頂ければ幸いである。なお、京都市右京区には、「蚕ノ社」という蚕を祀る神社がある。嵐電(京福電鉄)の「蚕ノ社駅」の近くにある。着物好きな方は、一度訪れてみてほしい。小さな神社である。近くには、広隆寺、太秦映画村などが存在する。

蚕ノ社

<明治期の基幹産業として:養蚕業と製糸業>

学校の歴史でも、よく出てきていた明治期の殖産興業政策では、官営の模範工場が建設されたが、群馬県富岡市の富岡製糸場(1872年)が特に有名。2014年、富岡製糸場は、世界遺産として正式に登録された。明治時代には、生糸が輸出の主要製品であったため、生糸の生産に力を入れた。1890年代では、繊維産業の輸出に占める割合は50%強、製造工業生産額に占める割合は40%強となっており、産業の担い手の役割を務めていた。豊田自動織機なども有名。豊田は織機などを作っていた。また、現在でも皇后さまが、純国産種の「小石丸」の養蚕を続けてくださっている。歴代の皇后さまが、紅葉山御養蚕所にて「小石丸」の養蚕を行われている。

蚕と養蚕の歴史:皇室のご養蚕について

蚕糸・絹業提携グループ全国連絡協議会
住所:東京都中央区日本橋人形町3-5-4 MS-2ビル6F
TEL:03-5642-6527

筆者:松尾俊亮

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