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着物業界上位30社のシェア推移:モノからコトへ

きものと宝飾社では、毎年「ステータスマーケティング新年号」(12・1月合併号)にて、着物業界の和装売上高を集計し発表している。その中で、着物小売店大手30社が占める着物業界のシェア(占有率)を集計している。直近の4年を掲載する。2018年の着物市場規模は約2,875億円。大手のシェアが上昇し、全体の53.0%を占める形となった。(「着物業界データ一覧ページ」を作成しました。ページはこちら

大手着物小売店30社 着物売上高推移及び着物小売市場規模占有率(シェア)

2014年(2013年度):1,496憶円 50.7%

2015年(2014年度):1,434億円 49.4%

2016年(2015年度):1,455億円 50.3%

2017年(2016年度):1,512億円 52.5%

2018年(2017年度):1,523億円 53.0%

 

概要

健闘するNC(ナショナルチェーン)もあるが、NC全体としてはやや低調。大きく躍進する全国チェーン呉服店もあり、2017年と比較すると、上位30社のシェアは上昇し、53.0%となった(弊社調べ)。LC(ローカルチェーン)や中堅の健闘・躍進が見られる。

こうした上位勢は、積極的にネット、ウェブ媒体を活用し、集客、告知、ブランディングなど、新しい取り組みを積極的に行っている。そのため、ここ3年で50%前後を維持しているが、この比率は今後上昇する事が予想される。M&Aによる吸収合併も進むであろう。

着物業界では、店舗の売上は店長の能力・店長と顧客の人間関係に大きく依存すると言われている。お店とお客様との関係性の再構築が、着物専門店に求められている。ネットショップでは、安さ、速さ、利便性が重視されるが、対面型の着物専門店では、その販売方法は大きく変化している。

集客方法の変化(電話からネット、SNSへ)

最近特に言われている事であるが、DM(ダイレクトメール)を送って電話をし、催事集客をする、という着物業界の伝統的な手法がますます厳しくなっている。DMを数千枚刷って、配って、催事集客しても一枚も振袖が売れなかった。という話も漏れ伝わってくる。また一般呉服の販売では特に「着物のお出かけ会」、「顧客を純粋に楽しませるイベント」が重視されている。大手ネット通販(アマゾン、楽天、ヤフーなど)にネット市場で優位性を保つことが困難であることは、明白なので、対面型販売(有人店舗)型の企業は、より接客、接遇を重視し、その技術を磨いていく必要がある。

振袖販売及び卒業式の袴レンタル・販売は、10~20代へのアプローチが必要となってくる商品である。そうした中で、SNS、特に10代の利用が多いツイッター・インスタグラムを有効活用している店舗・フォトスタジオ・ネットショップも多い。特に若年層ではインスタグラムが躍進しているといわれているが、今の利用頻度から見れば、ツイッターが有力な媒体である事に変わりはない。拡散能力が高いからだ。振袖対象客は10代なのであるから、10代と接触を図る必要があるのは自明の理である。10~20代は、スマートフォン、SNSを利用している。よって振袖を販売している会社はSNSを活用しなければならない。SNS、ホームページを活用しなければ、10~20代の目に留まることはない。それ以上でもなければそれ以下でもない。

電話集客の課題:電話は依然として強い集客力を持つが、電話がつながらくなっている

家への電話がつながらない。消費者が家への電話を嫌う為、つながっても嫌がられる事も多々ある。また個人情報保護法の観点から「どうやって電話番号を知ったのか?」と顧客に疑われ、詰問されることすらある。

これは時代の流れであり、致し方ないことかもしれない。逆の立場になって考えてみれば、明らかである。私も残念ながら、家にかかってくる電話はほとんどが営業の電話(白アリ駆除、保険の勧誘、貴金属の買取など)であるし、家への電話は警戒してしまう。家族・友人・知人であるならば携帯電話にかかってくるからだ。もちろん電話集客も有効な手法である事に間違いはないが、人間関係ができているか、有力な企画がなければ、新規集客は難しいものがある。

また、こうした電話集客は、従業員へのストレスも著しい。よほど教育を施さなければ、意欲の低下・早期退職にもつながる。特に新入社員にとって、電話に出てもらえない、電話で、お客様に断られ続ける事は大きなストレスであるし、若手社員の挫折につながる。離職理由の主たる原因にもなりかねない。

こうした問題への解決策として、着物業界では、様々な手法が模索されている。

多様なイベントの開催で顧客に「楽しさ、喜び、感動」を提供する

日常的な普段着とは言い難くなった着物。着物を買って終わりではなく、「着物を着て楽しむ場所・イベントの提供」まで行わなくてはならない。誕生日会や、おでかけイベント、食事会、観劇など、健闘している着物専門店ではこうした取り組みが盛んに行われている。ネット通販が伸長し、既存の小売店舗が苦戦する中、こうした取り組みは、対面販売を主力とするアパレルショップ、宝飾業界など他の業界にも利用できる。電話勧誘するだけで、物が売れる時代は終わったと考えて良いだろう。着物業界で言うのであれば、着物を売った後に更なる付加価値や体験を、顧客に提供できなければ、厳しい時代になっている。特に着物小売店は着ていく場所、イベントまで提供しなければならない。全てを提供するサービス業になったとも言える。

◆着物専門店セミナー「京都トップセミナー」

弊誌は、株式会社モア・ビジョンと共催で、毎月月初木曜日に着物専門店向けセミナー「京都トップセミナー」を開催している。全国から経営者、幹部を中心に毎月30名前後が集まり、経営者それぞれが、経営の課題、特商法の問題、集客方法などを発表しあい、課題や問題を共有している。経営者は悩みや問題を一人で抱え込むことが多い。他の経営者がどのような経営をしているのか知るためには、よいきっかけとなる。機会があればぜひご参加いただきたい。京都トップセミナーの様子は下記より。参加希望、問い合わせは、075-255-5596 又は問い合わせ まで。京都トップセミナーの記事は下記リンクに掲載。

京都トップセミナー


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